第39章 交わされた約束
ヨシノ「ご飯、食べるかい?」
キリ「はい」
ーー食事を始めてしばらく。
キリの心配とは裏腹に、いつもと変わらない食事が進んでいく。
キリ(なにも……聞かれない)
シカク達が昨日のことを何も思っていないはずがないのに。目の前では日常的で、他愛のない温かな会話が繰り広げられている。
キリは、初めてここで食事を口にしたあの日から、毎日必ずヨシノが出してくれる玉子焼きを、ひとつ口に放り込む。
「美味しいです」とそう言えば、嬉しそうに目を細めるヨシノ。自分が言われたわけではないのに、ヨシノ以上に自慢気なシカク。
「もっと食え」と、キリの皿にひょいひょい玉子焼きをよそってくるシカマル。
キリ「あなたの分は」
シカ「俺はいいから食え」
キリ「駄目」
シカ「いいっつの」
キリ「駄目」
シカ「いいって」
キリ「はい」
シカ「!?」
いつかキリがシカクにされたように。箸で玉子焼きを掴んで、シカマルに差し出せば、シカマルの体が停止する。
シカ「は? 待っ」
キリ「あなたの分」
シカ「わかったからそれ置……~~~っ!」
ぱくり、と玉子焼きを口にしたシカマルはもぐもぐと無言で咀嚼する。
キリ「美味しい?」
シカ「……おう」
そんな二人のやり取りを見守っていた夫婦は微笑を浮かべる。
ヨシノ「シカマル、美味しい?」
シカ「っ…、うめぇよ!」
シカク「シカマル、美味しいか?」
シカ「うるせぇ!!!」