第39章 交わされた約束
そう思って、部屋を出ようとしたキリは、ピタリと動きを止める。
昨日は泣き疲れてそのまま眠るという、まるで幼い子供のような真似をしてしまった。
さすがに泣き喚くなんてことはしなかったが、それでも、昨日はあまり周囲に気を配った行動をしたとは言えない。
同居しているシカクたちの事を考えれば、いつものように夕食を済まし、部屋の外にいる間だけでも普段通りにするべきだったはずだ。
キリ(………)
イチカが帰ってから、一日中、部屋にこもっていたキリをみんなはどう思っているのだろうか。
顔を合わせれば、何を言われるだろう。
聞かれたら、どのように答えればいいのだろう。
キリ(……言えない)
生きていくことに謝罪を繰り返し、ひたすら許しを乞うていただなんて。
キリ(気付かないで……欲しい)
もう知っているだろうか。
昨日のキリの淺ましさに。キリが、涙していた事に。
キリ(こんなところ……見られたくない)
こんなにも脆くて醜い……弱い自分を。
キリ(あんなにあたたかくて、強さをもっている人達に……言えない)
…………………………
重たい足取りでキリが居間に入れば、ヨシノだけでなく、すでに起床していたらしいシカクとシカマルの姿もあった。
ヨシノ「キリ、おはよう」
そんなヨシノに続いて、シカクとシカマルもおはようと声をかけてくれたそれに、キリはぺこりと会釈をして返す。
キリ「お、はようございます」
シカク.シカ.ヨシノ「!!」
三人は顔を見合わせて、微笑みを浮かべた。
これまで会釈のみに終わっていたキリの挨拶に、変化があったのだ。