第39章 交わされた約束
第39話 交わされた約束
バサッと窓の外で、大きな鳥が飛び立つ音がして、キリは目を覚ました。
のそのそと体を起こして、窓を開ければ、雲一つない快晴が目に痛い。
キリ(……綺麗)
胸の奥がーー晴れ渡っていた。
ずっと、どす黒く複雑に絡まりあって、確かに根付いていたもの。それが今では、すっかりと影を潜めている。
驚くほどクリアになっている〈それ〉が、キリには受け入れ難くもあった。
樹の里であれだけのことをしたのに、親友の許しを得たからといって、一晩でこうなってしまうだなんて。
なんて現金な奴なのだと自分が嫌になる。
ふと……頭に、樹の里に血の海が出来たあの日が思い浮かぶ。
キリ自らが仲間の体に切り込んだ感覚が、蘇る。
ドッドッと速さを増していく心臓。
キリ(………っ)
息苦しくて、冷や汗が流れかけた時、キリの頭にイチカの姿が浮かんだ。
【もう充分。自分のために生きて。自分の人生を生きていいの】
キリ「……っは、はぁ……は…」
悲しそうに笑って言ったイチカの言葉がふわりとキリを包んで、途端に呼吸が楽になった気がした。
他の誰でもない親友の言葉は、キリにとって何よりの免罪符となる。
ゆっくりと深呼吸をすれば、荒立っていた波が静かになっていく。
ちらりと太陽の位置を見る。今はいつもの起床時間とそう変わらないらしい。
キリ(……下へ、降りないと)