第38章 嵐のさったその後で
第38話 嵐の去ったその後で
キリ「……………………」
部屋で一人、キリは窓から空を見上げる。
まるで嵐のようなイチカの訪問が終わり、キリにまた木ノ葉での日常が訪れた。
キリ「………」
〈目標〉を失った今、キリの中には迷いが生まれていた。
キリは今まで、死ぬために。いや、殺されるために生き長らえていた。
樹の里でキリを憎む者に、復讐を果たしてもらうために。
そんな自分が、誰かから優しさを与えられていいのか。誰かと関わってしまっていいのか。
そんな罪悪感を感じて悩むことはあったが、最期は決まっていた。
それは遠かれ近かれキリの身に起こる事で。
ぶれることの無いーー必ず訪れるはずだった未来。
それ以外の選択肢はキリの中にはなかったのだ。
キリ(イチカ……)
だが彼女は、キリを許した。
イチカの親兄弟を殺し、仲間を殺したキリを……許した。
それだけにとどまらず、彼女はキリに、自分の人生を生きて欲しいと願ってくれた。
キリ「……っ」
キリは顔を歪めて、自らの小指をなでる。
ゆびきりをして、約束をした。
その約束を破れば、こんなにも心優しい親友が一人で泣き暮れるらしい。
そんなイチカの姿を想像するだけで、胸は切なく痛む。
キリ「生きて、いく……」
あの日のことを忘れられるわけではない。忘れたいとも思っていない。
……だけど。