第37章 長所と短所
第37話 長所と短所
本日は快晴。
ぽかぽかと心地良い日差しが降り注ぐ中、ある男女の喧騒が響く。
イチカ「キリに後衛やらせたら、絶対右に出る人なんていないんだから!」
シカ「キリの能力は、前衛で戦う方が活きるに決まってんだろ」
バチバチと火花を散らしている二人を前に、困った様子で見つめているキリと、そんなキリを含めて、面白いものでも見つけたかのようににやにやと見つめているシカク。
キリ「え…と……」
キリ(どうすれば……)
こんなおかしな展開になったのは、今朝の出来事が発端だった。
………………………
昨晩、イチカがアパートに泊まってその翌日。
キリが現在、奈良家に世話になっている事を告げれば、イチカがその奈良家のみんなに会いたいと言いだした。
そして、イチカと共に奈良家へと訪れたまでは良かったのだが……。
イチカ「うわ、大きな家ね……」
奈良と書かれた表札が掲げられている立派な屋敷を見ながらイチカは呟いた。
イチカ(あの男がこんなところに住んでるなんて……なんか腹立つわね)
そんなイチカを余所に、キリは考えを巡らせる。
おそらく普段ならみんな朝食を終えたあたりだと思うが、何せ突然の訪問だ。
どのように会ってもらうのが良いか……とその方法を探していれば、隣から元気の良い声が響く。
イチカ「すいませーん! おはようございまーす!!」
キリ「!! イチカ待っ……!」
急いでイチカの口を押さえると、イチカは何やら意気込んでいる様子で、奈良家を見据えている。
すると、ガラリと開けられたドアからシカクが現れた。