第36章 決別
結局のところ、歪みのきっかけとなる恋仲だと思った二人の関係も、会話の中でそれは勘違いであったことに気付いた。
イチカ「まあ、あんたの片思いだったわけだしね」
シカ「は!?」
この男がキリに惚れている事は、顔を真っ赤にした反応から見ても、まず間違いないだろう。
イチカ「まあ、あんたがキリを好きになるのも無理ないわよ」
シカ「っ!!」
なんて言ったって、私の親友なのだから。
キリ以上の女の子なんて、そうそういるものではない。実際、樹の里でのキリは男女問わず、常に人気があった。
目立っていたのは、世話好きで、いつも元気で騒がしいイチカかもしれない。
だがキリは、決して派手な事をするわけではないのに、そこにいると自然と目を惹き、人が集まってくる。
優しく穏やかで、優秀なのに人一倍努力家で、そんなキリの親友である事はイチカの自慢でもあった。
今は、樹の里にいた頃のキリとは、ずい分と違っているが、それでもキリの良さを見抜いたこの男の見る目が正しい事は認めよう。
イチカはちらりと横目でシカマルを見る。
あの事件の後、キリがどんな状態だったのかは大方想像出来る。
イチカ(キリの隣が私じゃないのは、やっぱり悔しいけど……)
この男はそんなキリが、ここに自分の居場所があるのではないかと思えるまでに、ずっとキリのそばにいて、キリの力となってくれていたのだろう。
一番必要な時に、キリを一人にしないで、隣にいてくれたのだ。
イチカ「ねぇ」
シカ「……なんだよ」
イチカ「こんな事でそんなに真っ赤になってて、あんたこれから大丈夫なの?」
そう言えば、「あんたの片思いだったわけだし」と言ったその時から顔を赤く染めていたシカマルがバッとイチカから顔をそらした。