第36章 決別
樹の里での事件のあとに、一人、他の里に行ってしまったキリの事が心配で、ここに来たのは嘘偽りのない言葉だった。
そして、木ノ葉隠れの里でキリの姿を見た時は、拘束もされておらず、外傷などもなくて。とりあえず酷い扱いを受けていなかった事に、何より安心した。
イチカ(……なのに)
その後すぐに、イチカはこの男がキリと恋仲であると勘違いした。
その時に、生まれた自分の中の歪み。
もとから、まだ綺麗に整地されたものではなかったソレはすぐに崩れていった。
まず真っ先に頭角を示したのが、嫉妬。
イチカが、誰よりもキリのそばにいたのに。時間はかかってしまったが、キリを支えるのは自分の役目だと思っていたのに。
キリが無事なことに安心した事も本当だが、キリは木ノ葉で傷を負ったまま生活をしていると思っていた。
だから、自分が助けにいくのだと、心に決めて木ノ葉に来たのだ。
それを、この男にキリの隣をとられてしまったようで。
そしてまた、キリに裏切られたような気持ちにもなった。
もう落ち着かせる事が出来たと思っていたあの日の悲しみは、イチカが想像していたよりも色濃く残っていたらしい。
そしてそれは最悪の形になって、キリにぶつけてしまった。
誰よりも、いつだって。人のことを優先する親友に比べて、子ども過ぎた自分が恨めしかった。
イチカ「あんたのせいだけど……全部、子ども過ぎた私のせいよ」