第9章 空が綺麗だと感じた日
シカ「あー、いや、そうなんだけどよ」
シカ(くそ、なんて切り出したらいいか、試合の事と子鹿の事どっちから謝るべきかとか、んな事ごちゃごちゃ考えてたら先に言われちまった)
はぁっと息をついて、シカマルは木陰に座り込む。
「とりあえず座ってくれ」というシカマルにならってキリもその隣に腰を下ろした。
シカ「悪かった」
改まって何を言われるかと思えば、シカマルに突然頭を下げられて、少々面を食らう。
シカ「あの鹿はな、親父も言ってたが奈良家の私有地で管理してんだ。鹿のツノは薬になる、それが急にいなくなったもんだから誰かに攫われたんじゃないかって探してた」
ちょっと前にも、鹿が攫われたもんだから敏感になってたんだ。そう言ってから、シカマルはがしがしと頭をかいた。
シカ「あー、いや、悪い。そんなのは言い訳にしかならねぇ。俺の早とちりで、お前のこと疑っちまって本当に申し訳ねぇ」
想像していた展開と異なり過ぎて、キリが反応出来ずにいると、シカマルは表情を曇らせた。
シカ「あと、お前が初めて演習で試合したことあったろ。ほら、チョウジとヒナタと」
こくりと頷く。
シカ「あの後、責めるような事を言って悪かった。お前に悪気があってやったことじゃなかったって、後からチョウジたちに聞いた」
そう言って、また深く頭を下げられる。
キリ「……………それを言うためにわざわざ?」
シカ「あぁ、こんなに遅くなっちまって悪いな」
「なんかタイミングがよ」とごにょごにょと何かを言っていたが、後の方は上手く聞き取れなかった。
キリ(てっきり、また何か問い詰められるものだと思ってた)
仮にそうだとしても、本当にあの鹿のことは何も知らないので、何かを言うことは出来ないのだが。