第9章 空が綺麗だと感じた日
キリ「どこまでいくつもり」
教室からはもう大分離れているが、シカマルは足を止める気配がないのでそう聞けば、ぱっと掴まれていた手が離される。
シカ「あー悪りぃ」
眉間に皺をよせたシカマルは、何かを悩むような素振りを見せて、ふと空を見上げた。
キリ「……?」
意図がわからず、不可解そうにシカマルを見れば、その視線がキリへと戻る。
シカ「いや、今日は空が綺麗だなと思ってよ」
シカ(…あーやべ、急にこんな事言い出したらただの変な奴じゃねーか)
キリと話す前に一旦、落ち着こうと空を見上げれば、あまりにも快晴だったから。
つい、思ったことがそのまま言葉に出た後で、しまったと思った。
どう考えても、無理に手を引いてきた相手に、第一声で使う言葉ではない。
しかし、シカマルの予想とは異なって、キリは先ほどのシカマルと同じように上を見上げた。
キリ「あぁ…確かに」
シカマルに言われて、見上げた空はとても青くて、目が痛いほど眩しかった。
キリ「空なんて…久しぶりに見た」
こうして、空を見上げたのなんていつぶりだろうか。
樹の里の人たちを殺した……あの時から私に心穏やかな時間はなかった。
そのまましばらく空を見上げた後、キリはゆっくりと目を伏せた。
キリ「悪いけど、私はあの鹿について知ってることはない」
そう本題に入れば、シカマルはまた眉間に皺を寄せる。
キリ「……? それを話したいんじゃなかったの」