第36章 決別
嗚咽交じりにそう語る親友に、キリの瞳にも涙がたまっていく。
キリ「私を、ゆる……すの?」
最後には消えてしまいそうな声で、そう言ったキリに、イチカは声を大にする。
イチカ「あれは、キリのせいじゃない。キリを責めるなんて、そもそもお門違いなのよ」
キリ「でも、里のみんなが」
続くキリの否定の言葉を、イチカは遮った。
イチカ「樹の里のイチカが、あんたの相方がそう言ってんのよ。何か不足があるの?」
ふんっとわざとらしく、あごを上げてそう言えば、ぽろりとキリの瞳から涙が溢れた。
キリ「っ………な、い…っ」
頬を伝って落ちた涙は、地面の色を変える。
今度は、キリのその涙をイチカがぬぐっていく。
イチカ「一人で、辛い思いさせて……ごめんね」
キリ「イチカはなにも……」
イチカ「私が一番に……味方しないと駄目だったのに、ごめんね」
キリ「イチカはなにも悪く……」
ないのだと、今にも消えそうな震える声でキリは言った。
イチカはぎゅっとキリの体を抱きしめて、身を寄せ合った。
声を殺して泣いているキリの、その雫が落ちなくなるまで、二人は長い間、そうしていた。