第36章 決別
ぽたりと、イチカの涙がキリの頬に落ちて、つたっていく。
キリ「イチカ……ごめんなさい」
イチカ「馬鹿! 何で謝ってんの!!」
キリ「イチカが泣いてるから……どうしたのイチカ……私のこと殺してくれて構わない」
イチカ「!!」
キリのその言葉が頭にきて、イチカは右手を振り上げた。
ぱしんっ
キリの頬を張った音が、その場に大きく響く。
キリ「っ!」
赤くなった左頬を気にもせず、この唐突な暴力をも受け入れたようなキリの態度が気に食わなくて、イチカはもう一度右手を振り上げる。
それを降ろす前に、右手は制止された。
シカ「ちょっと落ち着け。これじゃ話しになんねぇだろーが」
イチカは自らの腕をつかんでいるシカマルを睨みつける。
イチカ「あんたには関係ないでしょう! 黙ってて!」
シカ「おっと」
ばしっと腕を振り払って立ち上がると、イチカは少し荒くなっていた息を整える。
ごしごしと涙をぬぐっても、後から後から、それは溢れて止まらなかった。
その時、ふっと頬に手が触れる。
キリ「イチカ……泣かないで」
そこには悲しそうに顔を歪めているキリの姿があって、イチカの視界は更にぼやけていく。
イチカ(私が、あんたのこと責めた時も……そんな顔しなかったじゃない)
イチカ「うっ……く、うぁぁっ」
声をあげて泣き始めたイチカに、キリはおろおろと狼狽えて、次々に流れ出てくるイチカの涙をぬぐっていた。