第36章 決別
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『……ねぇこれ、本当に大丈夫なの?』
シカ「まあ、あとはお前の腕次第だろ」
そこには不安気な顔をしたシカマルが一人と、それを見ながら何やら指示をしているシカマルが一人。
『すぐにわかるんじゃ……』
シカ「だからその辺りは、お前の腕次第だっての」
「頑張れよ」と、背中を押されて、イチカは不安気にシカマルの姿に変化した自分に視線を落とす。
シカ「そんな仕草してっとすぐバレるだろーが、堂々としてろ」
『そんなこと言ったって……』
シカ「いいからほら、早く行ってこい」
…………………………
『っ!! 居た……』
シカマルから「キリと話していた場所でそのまま待たせている」と告げられ、イチカは半ば無理やり送り出された。
そこで、キリの姿を見つけて、イチカは立ち止まる。
心臓が変に早く脈打つ。落ち着かせるように、ごくりと生唾を飲み込んだ。
《キリ……》
何をしているでもなく、ただ佇んで、俯き気味のキリを見て、イチカの胸が痛む。
どう見ても元気な姿ではないキリのそれに、先ほどのイチカの言葉も随分と加担している事だろう。
ちらりともう一度、シカマルの姿に変化している自分を見て、どこにもおかしな所がないかを確認する。
イチカだって一人前の忍である。変化の術一つ満足出来ないほど、不出来でもない。
忍術には些か自信もある。しかし、キリは樹の里で自分以上に優秀な忍だった。
そんなキリを前に、上手くいくのだろうかと正直不安でしかない。
《あーもう!》
だが確かに、あの男の言う通りイチカの姿のままだと、まともに話す事は出来ないだろう。
半分ヤケを起こしつつ、どきどきと鼓動の早い心臓を小さく叩いて、イチカは覚悟を決める。