第36章 決別
シカ「樹の里で、親友がいるらしい」
イチカ「は? いきなり何言って……」
シカ「ずっと一緒にいて、そいつだけは特別なんだと。それがお前だそうだ」
イチカ「!!」
シカ「あいつ、最近になってやっとメシ食うようになったんだよ」
イチカ「は?」
シカ「俺はキリに名前で呼ばれた事がねぇ」
それがどうしたと、怪訝な目を向けてくるイチカを気に止めずに、シカマルは続ける。
シカ「キリが直接世話になった目上の人間しか呼ばねぇ。それ以外のやつは、俺も含めて、上の名前でだって呼んでるところを聞いた事がねぇ」
今でこそ、シカクも名で呼ばれているが、初めは奈良上忍だった。そうなったのもキリの意思ではなく、上司の命令といった方が適切だろう。
シカ(……はぁ)
今回イチカが現れた事で、シカマルの中にあった仮説が一つ消えた。
シカ(まあそうだろうとは思ってたけどよ……)
その可能性は限りなくゼロに近い事はわかっていたが。もしかしたら、もともとキリはあまり名前で呼ばないようなタイプなのかと。
だが、それもキリがイチカイチカと、その名を呼んでいることで万が一の可能性も消えた。
シカ「……笑わねーし、必要以上に喋りもしねぇ」
今まで一度たりとも、シカマルの名を呼ぶ事が無かったのは、やはりキリの壁だったのだ。
それを目の当たりにして、少し寂しさが募る。
シカ「誰かと関わりを持つ事を極端に嫌がる。……お前の知ってるキリは、そんな奴なのかよ」
イチカ「っ……」