第36章 決別
キリ「っ……、大切だった。本当に好きで、たくさん愛してくれた。大事に育ててくれて……私も、両親の事をとても愛してた」
シカ「……おう」
ひとつ、頭をなでるとキリは涙を堪えるようにぎゅっと目を瞑った。
シカ「……それで、他には?」
キリ「他……」
シカ「あいつは? ほら、イチカとか言う女。キリの知り合いなんだろ?」
キリ「イチカ……イチカとは、ずっと一緒に居て。いつも一緒で、里の中で一番仲が良くて、イチカは特別だった」
樹の里ではみんな仲はいいが、その中でもイチカは別格なのだと、キリは告げる。
シカ「親友、ってとこか?」
キリ「………私はそう……思ってた」
きっと、シカマルとチョウジに近い関係が、キリとイチカなのだろう。
キリにそんな存在が居た事が嬉しい反面で、不思議でもあり、そして、もしそうなら……先ほどイチカが話していた出来事がどれほど重いものかを思い知る。
シカ(もし俺が……チョウジの親や兄弟を殺したら……)
自分はどうやって生きていくのだろうか。
きっと、どんな面をして生きているつもりだと自問する日々だろう。
………………………
その後も、キリは少しずつ樹の里の事を教えてくれた。
それでわかった事は、キリが同胞殺しで親殺しだと言われていた噂が、全て本当だったこと。
キリが自らの両親、親友の親兄弟、同郷達に至るまで17人の死傷者を出したこと。
……そしてキリが樹の里を、両親や同郷達を、心から愛していたこと。
大切に、思っていたこと。
シカ(くそっ……なんだよそれ)