第36章 決別
いつも耐え忍ぼうとするキリの、その背負っている重荷を少しでいいから俺にも分けてくれと、そう願った。
シカ「その時の事だけじゃねえ。お前が樹の里でどんな風に過ごしてたのか、何を思ってたのか、少しでもいいからよ」
力が入り過ぎて白くなってしまっているキリの手を、そっと開きながらそう言えば、今にも壊れてしまいそうなキリと目が合って、胸の奥は締め付けられるように痛む。
キリ「わ……たしは、樹の里で産まれて……育って」
シカ「!」
キリ「兄弟、は……いなくて。両親は……穏やかで優しい人、だった」
シカ「おう」
ぽつりぽつりと途切れ途切れに、迷いながら話すキリの言葉を一つだって聞き逃さないように、シカマルは耳を傾けた。
キリ「本当に優しくて……いつも人の事ばっかりだった」
その言葉に、シカマルがつい笑いをもらせば、キリから不思議そうに見つめられる。
シカ「いや、じゃあキリは両親に似たんだなと思ってよ」
キリ「……?」
シカ「お前も、いつも人の事ばっかじゃねーか。自分の事すぐ後回しにするだろ」
シカ(まぁ自覚は無ぇだろーけど)
シカ「お前のそれは親譲りだったんだな」
口角が上がるのと同時に、親譲りとなればキリのこれは中々手強いものがあるだろうと、内心で苦笑いを零す。
こちらが気をつけなければ。と、改めて心に思っていると、キリはシカマルの言葉に、瞳を潤わせた。