第36章 決別
もしもシカマルが止めに入っていなければ、イチカ本人が止めない限り、切っ先はキリに届いていただろう。
そう言えば、キリはまた視線を落とす。
キリ「……いい。その為に今、私はここに在るから」
シカ「どういう事だよ」
その問いには答えずに、キリはイチカが向かった先に体を向けて、友の名を呟いた。
キリ「イチカ…っ」
イチカの後を追おうと、足を進めたキリの腕を掴む。
キリの揺れた瞳に、シカマルの姿が映った。
シカ「キリ」
キリ「離して。イチカを追いかける」
振り払おうとキリは腕を振るが、シカマルは反対に、腕を掴む力を強める。
その事に眉をひそめたキリを引き寄せて、シカマルはキリとの距離を縮めた。
シカ「……そんな面で、どうする気だよ。あの女にゃ悪いが聞きたい事もある。ちょっとぐらい話させろよ」
それぐらいいいだろうと、真っ直ぐにキリを見つめれば、こちらが引かない事を察したのかキリは力無く腕を降ろした。
大人しくなったキリを見て、シカマルもその腕をそっと手離す。
そして、いつもよりも酷く小さく見えるキリを見て、一つ息をつく。
シカ「さっきの、どういう意味だよ」
「止めなくていい、その為にここに在る」と、キリはそう言った。
キリ「……」
長い沈黙が続くが、じっとキリの言葉を待っていると、ゆっくりと……ゆっくりとキリは口を開く。
キリ「ずっと考えてた。樹の里に、私には何が出来るのか」