第36章 決別
その時、後ろから聞こえて来た足音。
イチカ達が振り返ると、そこにはキリの姿があった。
キリ「一応……終わった」
「まだ少し埃っぽいけど」と、何も知らずに話すキリの声が、今は酷く癇に障って仕方がなかった。
イチカ「っ……!!」
もう、胸の奥で怒りや悲しみ。様々な感情が入り混じって、自分でもよくわからないまま、イチカは太腿のホルダーにつけていた小刀を手に取った。
キリ「!!」
シカ「キリっ!!」
そのまま一直線にキリへと向かっていったイチカの右手は、キリの体に届く直前で止められた。
シカ「お前っ……! 何してんだよ!?」
がっしりとシカマルにつかまれたイチカの右手には、小刀が握られている。
イチカ「あんたには関係ないでしょう!?」
シカ「だからって黙って見てられっかよ」
キリを庇うように間に入るこの男に、苛立ちが募る。
そこをどけと、イチカが声を荒げる前に、キリの方が男を制した。
キリ「いいの」
シカ「いいってお前……!」
ぐっと男を押し退け、キリがイチカの前に立とうとして、また男がそれを止める。
そんなキリたちのやり取りが目の前で繰り広げられ、当本人であるはずの自分が蚊帳の外にいるように感じた。
それがまた、頭に血がのぼる材料となる。
イチカ「あんた、さっきから何なの? キリが何をしたのか、何も知らないんでしょ? だからそんな風にしてられるんでしょう!?」
叫ぶようにして、二人を睨みつければ、必然的に視線はイチカへと向けられる。