第36章 決別
ふつふつと湧いてくるそれは、止まることなく膨れ続ける。
イチカ(ふざけないで……!!!)
考えるよりも先に、イチカは駆け出した。
シカ「え? おいっ!」
キリの去った後を辿ってみるものの、イチカはすぐに行き詰まる。
気配を完全に絶っているわけではないが、キリは里内にいる間も注意深く、全開にはしていない。
イチカが角を曲がれば、途端にキリの行方は不明になった。
くるりと後ろを振り向けば、後をついてくるあの男。
イチカ「ちょっとあんた! キリの家はどこ?」
シカ「は? 俺は知らねぇよ。つーか、お前いきなり走り出して何なんだよ」
不思議そうにこちらを見つめる男に、内心舌打ちをする。
次々と思い出すのは、あの日キリが暴走したあと、残された仲間の死体と冷たくなった愛する家族の無惨な姿。
そして、この男が、何もわからずにイチカの目の前に立っていることが。
先ほどの赤く染めたあの顔が。
怒りを増幅させていく要因になっていた。
シカ「すぐ終わるっつってたし、待ってりゃそのうち来るだろ」
あくび混じりの、のん気な声がまたイチカの中の黒いものを成長させた。
イチカ「っ!! あんた、キリが私の里で何したのかわかってんの!?」
シカ「!!」
イチカ「あの子はね……!!」