第36章 決別
シカマルもキリの家に入った事はないが、あのキリが部屋を汚しているなんて事はまず無さそうだ。
留守中に積もった塵の掃除や換気といったところだろう。
イチカ「住んでる……?」
その言葉に、ぴくりと反応を示したイチカは、木ノ葉の里を眺めていた視線を再びシカマルへと戻す。
イチカ「何、あんた……まさかキリの男? 付き合ってるの?」
シカ「っ!!」
シカ(なっ付き合っ……!?)
言われた瞬間、シカマルは顔に熱が集まっていくのを感じ、間違いなく自分の顔が赤くなっている事がわかる。
友人とも同期とも同居人とも違う、恋人であれば、どれだけ良かったか。
キリも自分を好きでいてくれたら、どれだけ良かったか。
事実とは異なるが、その勘違いがまた少し嬉しかったりで、いつもキリの事となると平静ではいられない。どうにも感情が浮ついてしまう事がある。
だから、この時も気付けなかったのだ。
イチカの表情に変化があったことに。
…………………………
イチカ(……今、なんて言ったの?)
イチカの聞き間違いでなければ、目の前にいるこの男は今、キリと一緒に住んでいると言ったのか。
まさか。
そう思って、この男にキリの男なのか、付き合っているのかと、問いかける。
すると、お世辞にも愛想が良いとは言えない終始仏頂面だった男が、顔を真っ赤に染め上げた。