第36章 決別
シカ「あー、母ちゃんがお前に仕事頼んだっつーから、まあ手伝いに来たんだけどよ。もう必要ねぇみてーだな」
キリ「……………」
じっとこちらを見たキリは、再び上空へと顔を上げた。
シカ「……キリ?」
キリ「……あなたはいつも…っ!」
何かを言いかけたキリは、突如、弾かれたように後ろを振り返った。
シカ「? なんだよ?」
キリの目線の先を辿っていけば、木ノ葉の出入り口である阿吽の門で門番と女が、何やら揉めているのがわかった。
『だから、いつまで待たせるつもり? 友達に会いに来たんだってば! 紹介状もちゃんとあるでしょう!?』
シカマルと同じ年ぐらいだろうか。
その女は肩のあたりまである金色に近い髪をなびかせながら、紹介状らしきものを門番につきつけている。
『だからなぁ! 今その確認をしてると言ってるだろう、大人しく待て!!』
ぎゃんぎゃんと吠えあっている二人に、視線が釘付けになっていたキリが、ふらりと一歩、足を踏み出した。
キリ「イチカ……っ」
イチカ「!!」
キリの声に振り向いた女は、ぽかんと目と口を開いたかと思えば、次に満開の笑顔を見せた。
イチカ「キリ!!!」
イチカと呼ばれた女が、ダッとこちらに駆け寄ろうとした瞬間、門番に首根っこをつかまれる。
イチカ「いたっちょっと!? 何すんのよ!!」
『お前こそ何してんだ、何べん言ったらわかるんだよ! お前にはまだ入国許可が降りてないって言ってるだろ!! 不法侵入だぞ』