第36章 決別
お願い、助けて。
あのキリが初めてした必死の願い。初めてのSOS。
何一つ応えてやれなかった自分の無力さが情けなくて、酷く腹立たしい。
シカ「いつも守ってやれねぇ……」
こんなにも、守りたいと思っているただ一人の人なのに。いつだってそれは失敗に終わる。
その後も、キリがどれほど心に傷を負ったのか、キリを思えば痛いほどに分かったのに、フォローを入れていたのはシカクとヨシノで。
ヨシノはキリに声を掛け続け、シカクもまたそれに同調しながら、キリに寄り添っていた。
そんな中、何と声をかければ正解なのかがわからず、シカマルはただ曖昧にその場に居ただけだ。
朝も夜も、一緒に飯を食べるし、話しかければキリはいつものように答える。
誰も気付かないだろう。
どこか、キリの態度に違和感があることを。
普段とは変わらないのに、確実に出来ているこの距離を。
今までだって、歩み寄り、距離を縮めてきたのはシカマル達で、これからもそうしていくつもりだった。
でも、キリが作ったこの距離が、今は何故か怖くて仕方なかった。