第1章 プロローグ
私の住む樹の里は、はずれにあるごく平凡で小さな里である。
でも、それはある一部を除いてのお話。
自然に溢れ、少々辺鄙なところにあるこの里では、平和で穏やかな生活を送るが、そこに一つの問題がある。
樹の里には、ここでしか採れない特殊な鉄があった。
他とは比べものにならない強度を持ち、それ以上に驚くべきなのがその軽量さであった。そんな武器にもってこいのこの鉄を求めて、侵入者や争いが起こる事もある。
人口もそう多くない樹の里で、生活の要にもなるそれを守り抜くために、守り抜くだけの力がある”忍”を育てなくてはならなかった。
それが、私たちである。
私たちが忍に選ばれる基準。
それは、まず産まれて間もない、赤ん坊に初めての薬剤投与を行う。
死ぬような薬物ではないが、それなりの痛みや症状が現れるそれに耐え、その適応力のレベルによって「一般人」になるのか「忍」になるのかが分けられるのである。
里を守るために存在する忍。
それはこの里にとって必要不可欠な存在で、忍になるということはこの里で最上級の名誉であった。
初めての薬剤投与の時に、異常な適応力を見せた私はすぐに忍へのレールが敷かれた。
その後も良い結果を出し続けた私に、両親は鼻高々にしていたことを覚えている。
それにはなんの疑問もなかった。
里の者はみんな忍になりたがっていたし、一般の人からは常に感謝され続けていた。
歴代でトップを誇る適応力を見せた私は、薬の量もそれに比例して増加をみせる。
ぎしぎしときしむ身体に容赦なく走る激痛。
何日も治まることのないそれに私の身体は耐えた。
物心つく以前から行われた薬物による、強制的なチャクラ量の増加、身体能力の促進、動体視力などの視神経の発達まで。
12才になった今では、普通ならば致死量の薬が日常的に投与されるようになっている。
ある日、そんな生活は一変することとなる。