第35章 35話 重たい犠牲
* * *
シカ「!!」
イタチが消えた後。
走り出したキリを追っていたが、あまりのスピードにキリとの距離は少しずつ開いていった。
しかしながら、目的地はそう遠くではなかったらしく、どうにかキリに追いついた時。
シカマルはその光景に足を止める。
既に、あたりに忍の気配はなかった。
そこにはキリと二人。かつてキリを毒殺しようとしたあの老婆が横たわっていた。
そして老婆の下に広がる血の赤を見て、シカマルも慌てて駆けつける。
キリ「フミさん……!」
腹部に手早く止血テープを巻いていくキリを、手伝おうと老婆に触れて、気付く。
シカ(っ!! もう……)
スッと首の動脈に触れて、それは確信に変わる。
キリ「フミさんっ!!」
止血を終えたキリは、老婆に心臓マッサージを開始する。
シカ「っ…キリ……!」
老婆は既に、事切れていた。
この状態からでは、止血も心臓マッサージも、全て無意味に終わるだろう。
そして、キリが老婆がもう絶命している事に、気付いていないわけがなかった。
その救命行為が意味をなさない事も、きっと気付いているだろう。
シカ「キリ……もう…」
それが、わかっているからこそ、続く言葉が言えなかった。
もうやめろ、大丈夫か、そんな言葉が浮かんでは胸でつっかえて、ただ顔を歪めてその光景を見ていることしかできなくて。