第35章 35話 重たい犠牲
声を落とした暗部の小刀が、更に腹部に奥深く刺さる。
フミ「っ……罪? そんなものあの子にだってないだろう。あんた達は何故あの子を狙う? 私とあの子のやり取りを見てわかるだろう。キリは木ノ葉に謀反なんて企てちゃいない。人の心配ばかりして……優しい子だ。それを、わかった上であんたらはキリを狙ってんのかい?」
『………全て、上の命令です。あの子には申し訳ないが、仕方のない事だ』
フミ「……ふん、わかった上でやってるなんざ救いようがないね」
ぼたぼたと、小刀を伝って落ちていく血が地面を赤く染める。
出来れば、キリにもう一度謝って、今度は本当のお茶を飲みながら、ゆっくりと話したかった。
フミ(……私の淹れたお茶は美味しいっておじいさんのお墨付きだったんだよ)
ふらりと歪んだ視界の中、フミは膝をついた。
「自分」を酷く軽視しているキリ。
そんなキリが困った時は、助けてあげたかった。
そして、この優しい子どもの成長を、ゆっくりと見守っていきたいと思っていた。
フミ(奈良のぼっちゃんとこれからどうなっていくのか、実は楽しみにしてたんだけどね)
キリに心配され、汗を拭かれて、わたわたと取り乱していたシカマルの姿が頭に浮かんで、フミはフッと口角を上げた。
キリにしたいこと、してあげたいことがあったから。
少し残念にも思えるが、でも、あの子のそばには彼らがいる。だから、きっと大丈夫だろう。
重くなっていく瞼に、フミはゆっくりと目を閉じた。