第35章 35話 重たい犠牲
全速力で、シカマルは森の中を駆ける。
シカ(くそっ……こっちでいいのかよ!?)
あの少年が指した方角に一目散に走っているが、キリたちがその後どのようなルートを辿ったのかはわからない。
わずかに残るキリの匂いを追ってはいる。けれど、シカマルは五感に自信がある忍ではない。
正確に拾えているのか。敵がわざと違う道に痕跡を残していたらどうする。
もし途中で道を違えてしまえば、キリに追いつくどころか離れて行ってしまう。
シカ(だからって今はそれ以外に道はねぇ)
ぐっと地面を蹴る力を強めて、走り続けた。
すると、遠くの方でわずかに人の気配がして、シカマルはそちらへと足を向ける。
近付いていけば、キリの気配があるのがわかり、そのスピードは更に速まった。
シカマルの位置からは、相手側が何を話しているのかはわからなかったが、叫び声に近いキリの声が響き渡る。
キリ「誰か、誰か助けて……っ!!!!」
シカ「っ!!」
その声が聞こえた瞬間。
道中で考えていた策略も何もなく、気が付いた時には近くにいた忍を殴り飛ばしていた。