第35章 35話 重たい犠牲
フーフーッと息を荒げる少年の肩を掴めば、怒りと焦りの色が混じった少年と目があった。
シカ「その話、聞かせてくれ。その姉ちゃんってのはキリの事か?」
アサヒ「!! あ……名前はわかんねぇ……けど、他の里から来て、いつも化け物だって言われてる。黒くて長い髪の姉ちゃんで……でも! 違うんだ、化け物なんかじゃねえ!」
もう、十中八九その姉ちゃんというのはキリのことで間違いないだろう。
シカ「そいつが今どうしたって!?」
アサヒ「しゅ、修練場で会って、そしたら急に面をつけた男に襲われて……っ」
握りこぶしを固めた少年の目からぼろぼろと涙が落ちる。
アサヒ「俺、姉ちゃんを化け物だって……そう言ったのに、守ってくれたんだ……! 兄ちゃん! あの姉ちゃんのこと助けてくれっ!!」
シカ「っ……その後はどうなった? 今キリがどこにいるかわかるか!?」
アサヒ「男たちについて来いって言われて、連れてかれた。何処かはわかんねぇ……姉ちゃん、俺たちには逃げろって……っ」
少年は俯いて強く唇を噛んだ。
シカ「そいつら、どっちに行った?」
そう問えば「向こうに走っていった」と、指をさした少年の肩に、シカマルは手を置いた。
シカ「お前達はこのまま、火影室に行って援護要請を頼む。あと、こっから少しいった所に奈良っつー俺の家がある。そこにシカクって上忍がいるから、同じ様に伝えてくれ」
急いている気持ちをどうにか抑え、そう伝えれば「わかった!」と返事をした少年が涙を拭った。
シカ「今からすぐに手分けして行ってくれ、その指示はお前が出せ。出来るか?」
力強く、しっかりと頷いた少年を見て、シカマルは立ち上がる。
シカ「頼んだぞ」