第35章 35話 重たい犠牲
樹の里から来たという少女。名はキリといったか。目にしたのは初めてだが、噂は色々と聞いている。
ずいぶんと不穏な話がついて回るこの少女の罠という可能性も考えられる。
メリットはさておき、出向いた先で待ち伏せなんて展開はごめんだ。
まだ幼いといえども忍。偽りを隠すことが出来てもおかしくはない。
『 ひとまず、捕縛して木ノ葉に連行』
任務帰りに偶然で、対応すべきではない案件なのは間違いないだろう。
その言葉に、もう一人の暗部も頷いて、二人は再び戦闘体制に戻る。
キリ「っ!! 待って下さい! 今も一人で戦っているんです。どうか、どうかお願いします……っ!!」
もう、キリの言葉に返答が返ってくることはなく、暗部は捕縛用のワイヤーを取り出した。
キリ「っ!!!」
キリ(私の言葉じゃ届かない……っ)
たとえこの二人が敵でなくとも、ここではキリの発言は何一つ意味を成さない事を思い知る。
キリ(このままじゃフミさんが……っ)
キリ「誰か、誰か助けて……っ!!!」
自分の無力さに、ぐっと目をつぶってそう叫べば。
彼の、声がした。
シカ「っらぁぁ!!」
『!!』