第35章 35話 重たい犠牲
キリ「……この人達にとって私は不要な存在です。でも木ノ葉の里にとって、この人達は必要な存在です」
フミ「……だから、自分は狙われてるってのに攻撃はしなかったと」
フミ(そういうことかい)
その言葉にフミは一つため息をついてから、小さく言葉を落とした。
フミ「ばかな子だね。そしてーー」
すぐにフミは土遁の印を組み始める。
キリ「!!」
気付いたキリは距離を取ろうとしたが、時は遅く、フミの印は組み終え、術を発動する。
フミ「あんたらは大馬鹿モンだねっ!」
『『!!!』』
キリの背後から聞こえた音。振り返ると、そこには等身大を超える12個の土の山があり、その内の5個には先ほどの忍達が囚われていた。
フミ「ちっ…たったの五人かい。私も随分と衰えたもんだね」
「半分も捕まらないのか」と、独りごちるフミに、キリも、暗部でさえも状況についていけていないようだった。
フミ「ああ、全く。恥ずかしいったらないよ」
自身が狙われてもなお、木ノ葉の忍には手を出さない。そんな心を持つ子ども相手に、大人が寄ってたかって攻め立てて。
フミは苦渋の表情で、ぽつりと呟いた。
フミ「嫌になるよ。あんたらも……私も、いい大人が何やってんだろうね」
『フミさん! 一体何を……!』
すんでのところで、フミの土遁の術を避けた暗部はクナイを構えた。
フミ「……その声、あんただね。私の家にこの子の暗殺依頼に来たのは」
そう言って、先ほどまで終始愉快そうにキリをいたぶっていた暗部に、フミは鋭い視線を向ける。
フミ「この私をたばかるなんて100年早いんだよ」
「覚えておいで」と向けられた殺気に、暗部がぐっと息を飲んだのがわかった。