第35章 35話 重たい犠牲
敵から、先ほどまでとは比べものにならない速さで繰り出された拳が、ドッとキリの腹部にめり込んで、体は宙に浮いた。
『おっと…』
キリ「!」
打撃の勢いのまま飛んでいった体は、何かにぶつかって停止する。
その感触にキリが後ろを振り返れば、そこには見たことのある人物の姿があった。
キリ「あなたは……」
『やあ、久しぶりだね。お嬢ちゃん』
そこにいたのは、一人の老婆。
彼女は受け止めたキリの体を下へとおろした。
そして少しだけ微笑んだ彼女の姿。
キリの頭の中でそう遠い記憶ではない、ある日の出来事が思い返される。
以前、シカマルと共にキリを客人として自宅へ招き入れ、そこで毒を盛りキリの暗殺をはかった老婆、フミである。
彼女は、ゆっくりと口を開いた。
フミ「お嬢ちゃん、二度仕留める隙はあったろう。どうして殺らなかったんだい?」
キリ「!」
防戦に徹していたキリだが、実のところ二度ほど好機はあった。
確かに完全に油断している忍達に、やろうと思えば二人、仕留めることは出来ただろう。
キリ「………」
フミ「答えてくれないかい? お嬢ちゃん」
キリ「木ノ葉の、忍だからです」
フミ「……それは?」