第35章 35話 重たい犠牲
『上層部もずいぶんと面白い依頼をくれたもんだ。これなら、お前を痛めつけることに俺も心を痛める必要はないよなぁ』
『おい、喋りすぎだ』
そう言って、くつくつと笑う暗部を仲間が嗜めるが、男はさらに笑いを浮かべるだけだった。
『どうせ、もうこいつが木ノ葉に戻る事はねぇんだ。構いやしねーだろ? ……お前も可哀想になぁ。故郷の里には追い出されて、辿り着いた木ノ葉隠れの里でもこうして命を狙われて』
クナイを手に取った暗部は、遊ぶようにそれを一度くるりと回してから、その切っ先をキリへと向ける。
『俺は優しいからなぁ、同じ木ノ葉の仲間として楽にしてやるよ』
キリもするりと刀を抜いて構える。
キリ(……まだ、やる事がある)
そのために、こうして今まで生き長らえて来たのだ。
キリ「私は……今は、まだ死ねない」
地を蹴る音と共に、戦いの火蓋は切って落とされた。
* * *
それから十数分、遊ぶように攻撃を仕掛けられ、キリは防戦に徹していた。
『おい、そろそろいいか』
『あーそうだな』
寄ってたかってまだ幼さの残るキリをいたぶるような趣向を持っておらず、後方で傍観を決め込んでいた忍たちも、その言葉に動きを見せる。