第35章 35話 重たい犠牲
ガキンッ
アサヒの真横で、キリによって弾かれたクナイが、そのまま地面へと落下した。
鉄がぶつかり合う音を聞き、少年たちはおそるおそる瞑っていた目を開けた。そして、そこに広がる光景がすぐに理解出来ず、体をフリーズさせている。
それもそのはずだ。
そこには、同胞殺しの化け物だと噂の女の左腕に抱かれているアサヒと、そのすぐそばに落ちているクナイ。
そして、あさっての方向に刀を構えている化け物の姿があったのだから。
キリ「みんなのところへ。早く」
そっとアサヒをおろして、キリが前方に意識を集中させれば、そこからは面をつけた忍二人の姿が現れる。
………………………
そして、話は冒頭へと戻り、キリは現状に顔を歪ませた。
暗部二人の内の一人が、あろうことかキリではなく、子どもたちに攻撃を仕掛ける。その度にキリが右往左往しているこの状況を明らかに面白がっているのだ。
今はまだ無傷でいる子どもたちも、このまま戦いが続けば、いつどこで負傷させてしまうかわからない。
手詰まり状態の現状に、キリの刀を握る力は強まった。
すると、面越しでもにやにやと笑みを浮かべているのが感じられる暗部の男は口を開いた。
『ま、お遊びもこんなもんか。殺人鬼ちゃん、大人しくついてきな』
「暴れてくれても俺は一向に構わないが」と笑う暗部に、キリはゆっくりと刀をしまう。