第34章 さよなら またね
シカク「よし、お前も群れに戻るぞ」
にこりと微笑んで、鹿の背中を押せば、鹿は微動だにしない。
シカク「ん?」
先ほどよりも強く押してみれば、鹿は足を進めることなく、ズズッと重たい音を立ててその体はスライドする。
シカク「……………」
更に力を込めれば、必死に向こう側へ行かぬように踏ん張って、地面をえぐりながらずりずりとスライドした鹿は、鳴き声をあげて抵抗した後に、慌ててキリのもとへと駆け寄っていく。
そして、鹿は再びキリの腕に抱かれ、必死に身を寄せ合う二人を見て、シカクはゆっくりと立ち上がる。
シカク「……よし、俺は仕事に戻る。シカマルあとは頼んだぞ」
そう告げて、スタスタと来た道を戻ろうとするシカクの肩は掴まれた。
シカク「なんだ、シカマル」
シカ「親父、今日は休みだったはずだよな」
一体何の仕事に戻るっていうんだよ、とがっしりと肩を掴んでいる手に力が入る。
シカク「離せ、俺には無理だ」
心配になってシカマル達の様子を見に来たはいいが、まさかこんな壮絶な状況になっているとは思いもよらなかった。
シカ「俺だって無理だっての! 自分だけ逃げようったってそうはいかねぇからな」
シカク「馬鹿お前あんなの何回も出来るわけねーだろうが!」