第34章 さよなら またね
シカマルだって、この鹿に。
愛情も愛着もあるのだ。
シカ(俺だって、出来るなら……)
ずっと一緒に。
その想いがまた、今のこの時間を無闇に伸ばす結果となっている。
そんな八方ふさがりのシカマルのもとに、一つの気配が近付いてくる。
シカク「シカマル、キリ何やってんだ」
あまりにも戻るのが遅い二人に、もしかして何か問題があったのだろうかと、心配して様子を見に来たシカク。
シカ.キリ「!!」
シカ「親父……」
キリ「………」
キリが更にぎゅっと鹿を抱き寄せると、シカマルは助けを求めるようにシカクに視線を送る。
その光景に、現状を理解したシカクは少しつらそうに眉を下げた。
シカク(キリに……この別れは酷過ぎたか……)
シカクは身を寄せ合う二人のもとにしゃがみ込んで、ぽんっと二人の頭に手を置いた。
そして、シカクは二人の頭を優しく撫でる。
シカク「キリ、こいつは本来の仲間の……家族のところへ帰れるんだ。それは、わかるな?」
キリ「……はい、わかっています」
シカクの問いかけに、小さな声でキリは答えた。
シカク「何も、二度と会えなくなるわけじゃねぇ。会いたくなった時は会いにくればいい。だから、な。その手を離してもらえねぇか」
キリ「っ………」
キリは、もう一度鹿を強く抱きしめて、キリを見上げていた鹿の額に、自身の額を合わせる。
そうして、キリはそっとその腕を離した。
シカク「キリ、ありがとな」