第34章 さよなら またね
切なさが混じる鳴き声に、顔を歪ませながら走っていれば、背後から何かが転げ落ちる音が聞こえる。
キリとシカマルが振り返れば、急な下り坂になっていた道を、ゴロゴロと滑り落ちている鹿が見えた。
キリ.シカ「!!」
それには堪らず、二人とも足を止めて駆け寄ると、鹿はバタバタと慌てて起き上がって、やっと二人のもとまで追いついた事にちぎれんばかりに尻尾を振るう。
キリ「怪我は……!」
キリとシカマルは鹿の体を注意深く見渡すが、大きな外傷やどこかが折れた様子もなく、小さなかすり傷が一つあるだけだった。
これならば、放っておいても大丈夫な程度で、治療は不要だろう。
ホッと一息つけば、鹿は鳴き声をあげながらキリに頭をすりつける。
キリ「っ……あなたの本当の居場所はここなの。お願い、戻って」
それでも、ぽす、ぽすっとまるで置いて行かないでくれと、すがるように。鹿はキリの体に、何度も何度も頭を寄せる。
キリ「っ……!」