第34章 さよなら またね
シカ「あいつのとこ行ってくるわ」
シカク「……そうか」
シカ「おう」
交わされた二人のアイコンタクトに、疑問符を浮かべながらもキリは「ついてきてくれ」というシカマルの後に続く。
そして、辿り着いたのは、あの子鹿がいる部屋で。
久しぶりに会った子鹿は、キリに気がつくと即座に足元に駆け寄ってくる。
キリ「久しぶり。元気そうで良かった」
すりすりと頭を寄せてくる子鹿を、キリも愛おしそうになでる。
その光景を見ていたシカマルは、一人、こぶしを強く握りしめた。
シカ「キリ、話がある」
そう改まったシカマルの声に、キリが向き直れば、普段より一層眉間の皺を多くしているシカマルの姿があった。
話す前にシカマルは一度、小さく深呼吸をする。
そして、決意を固めたように、口を開いた。
シカ「そいつの怪我は、キリが知ってる通りかなり重傷だった。キリのおかげで一命を取りとめちゃいたが、産まれて間も無い子鹿には抗体がねえ。そのまま放っとけば傷は膿んで広がって……そいつは生きる事が出来なかった」
話を聞くために撫でるのを止めたキリに、もっとかまってくれと言わんばかりに子鹿は体を寄せてくる。
それにキリは困り顔で「少し待ってね」と、子鹿の頭を一度ぽんぽんとなでてから、シカマルの話に頷いた。