第34章 さよなら またね
要らなかったら捨てていい、とシカマルに渡された桃色の花。
ふわりと柔らかな香りが鼻をかすめて、少し懐かしさを感じる。
以前、キリが入院した時。シカマルが毎日、届けてくれた花だ。
キリ「……どうも」
シカ「おー」
目当ての人物に会ったことで、シカマルの見舞いという目的は変更になる。
シカ「今からどうするつもりだったんだ?」
キリ「特には、考えてない」
シカ「んじゃ、一回家帰るか? ……ちっと話さなきゃなんねー事もあるしな」
キリ「……? わかった」
改まって、話さなくてはいけない事とは何か。
疑問を抱きながらも、キリは頷いて、シカマルと帰路についた。
任務のために家を出てから一週間を超えて、キリは奈良の家に足を踏み入れる。
するとすぐに「おかえり」と、シカクとヨシノの声が聞こえてきた。
キリの帰宅に気付いた二人は、少し驚いた様子でキリの様子を窺う。
シカク「キリ! もう帰ってきて大丈夫なのか?」
ヨシノ「ほんとだよ、無理してないかい?」
心配そうにキリを労わる二人に、キリは頷いて快調を知らせる。
すると、帰り道からどこか普段とは様子が異なるシカマルが、重々しく口を開いた。