第34章 さよなら またね
キリ「むしろあれは、あなたの方が気にしてると思うけど」
「私は全く気にしていないのに」と、少し困ったように眉を下げたキリに、嘘はないように思う。
シカ「じゃあどうしたんだよ」
そう問えば、キリの表情は次第に影が募っていく。
しばらく続いた重い沈黙のあとに、それはポツリと破られた。
キリ「…………樹の里のことを、思い出してた」
シカ「!!」
キリ「それだけ。だから気にしないで」
シカ「…………おう」
はじめて、ほんの片鱗に過ぎないが、樹の里のことをキリから話してくれた。
「何を思い出してたんだ」と、このまま聞けば、キリはもしかしたら話してくれるのかもしれない。
でも、今は、いい。
胸の内をほんの少しでも、話してくれるようになったのだ。
だからいつか、キリの口から聞けるその時までは。
シカ「お前は、大丈夫なんだな?」
たとえ大丈夫じゃなくても、キリはきっと「大丈夫」と、そう言うのだろうけど。
キリ「ええ、平気」
シカ「はぁ、そうかよ。ほら」
予想通りの返答に、シカマルは少々困り顔で笑ってから、持っていた花を手渡した。
キリ「!」
シカ「もう見舞いにゃならねーけど」
キリ「でも」
シカ「お前に買ったもんだ。俺が花持ってたって仕方ねぇだろ」