第6章 謝るタイミング
アカデミーでは何を言われても平然としていたキリが、鹿を渡して来る時は相当に焦っていた。
鹿の救助時に何があったかは分からないが、あんなに汚れてあんなに汗をかいて必死で1匹の動物を助けようとする奴が、悪い奴には到底思えない。
シカ(親殺しで、同郷殺し…)
いつか聞いたそれは、本当なのか嘘なのか真偽は不明だ。
けれど、自分の知らない過去はもうどうでもいい。
ここに来てからのあいつと話がしたい。
そのためにまずは、きちんと謝らなくてはいけない。
シカ(よし、今日の授業が終わったらあいつを捕まえて話をする)
10日後には、アカデミーの卒業試験が迫っていた。のんびりしていたら、このまま卒業してしまう。
そう心に決めて、今日一日を過ごした。
* * *
最後の授業も終わりにさしかかり、イルカの終了の声を待つ。
シカ(もうすぐだ)
イルカ「じゃあ、今日の授業はこれで終わりだ。みんな気をつけて帰れよ!」
ガタッ
イルカの挨拶とかぶり気味に席を立つ。そのまま走ってドアの方へ向かうが、すでにキリがドアを開けて出ようとしている所が見える。
ナルト「おわっ、なんだってばよ」
いの「ちょ、シカマルどうしたの?」
急なシカマルの行動にあたりが驚いているが、知ったことではない。
ナルトにぶつかりそうになりながらも、続いて教室を出ればキリの姿はもうなかった。
シカ「嘘だろ。くっそー、早過ぎんだろあいつ……」
まず席の分が悪過ぎる。
1番前のドア横にいるキリと、教室の後ろの席にいる自分では確かに距離は違う。
シカ(それにしたって…いくらなんでも早過ぎるだろーよ)
あいつはなにか、授業が終わったらすぐに帰らないといけない病気にでもかかっているのだろうか。
はぁ、とため息をついて座り込む。
あの日から毎日、家でシカクに今日こそちゃんと話をしたのかと責められる日々が続いている。
今日もまた、そうなるのだろう。
シカ(あー、めんどくせー)
………………………
ーーその後のシカマルーー
いの「あんた、急に走ってったのに何やってんの?」
シカ(もう知らねー。一人になるの待ってたって無理だ)
いの「ちょっと、聞いてる?」
シカ(明日、絶対捕まえてやる)