第6章 謝るタイミング
* * *
はぁ、とシカマルはまたため息をつく。
あの時の事を思い出したら、本当に自分の馬鹿さ加減にため息が出る。
シカ(…タイミングも悪かったんだよ)
3ヶ月前に鹿がさらわれていたこと。それにチョウジの腕を折った一件。キリの普段の態度だって……。
そこまで考えて、首を振る。
シカ(いや、どう考えてもこれは俺が悪い)
はなから疑ってかかっていたこと。子鹿の包帯に気が付かなかったこと。それにキリが向かおうとしていたのは木ノ葉隠れの中心部だった。
それらは少し考えれば、事実に気付くのに充分だっただろう。
どこの誰が、盗んだ子鹿を人目がつく里内に連れて行くというのか。
その証拠に、あの場に来たシカクは即座に状況を把握した。そして息子の愚かな行動にも気が付いたのだ。
キリの不穏な噂を全て聞いていたこともあって、いつの間にかキリに対する悪い先入観を持っていたのだろう。
もやもやと、罪悪感が広がった。
ちらりとキリを見ると、無表情で無機質にそこに座っている。
この1週間、キリの様子を伺っていたが、彼女は本当に誰にも関わることなく、アカデミーに来ていた。
授業態度は真面目で、当てられても淡々と答える。
けれど、チョウジ達との試合の一件から、キリは体術や忍術の演習試合には参加しなくなった。
たまに参加する時は、同期の中でNo1の実力を持つサスケが相手に選ばれた。おそらく、また怪我をさせないためにというイルカの采配だろう。
シカ(そんな、悪い奴じゃねーんだよ。…多分)
演習試合の不参加や、実力No1であると同時にモテ男No1でもあるサスケとの試合という特別待遇。主に後半の理由で、周囲の女からはブーイングの嵐ではあったが。
初試合のあと、キリは何かを言いかけていたし、戸惑っていたようにも見えた。
何を言おうとしていたのかは、今はもうわからないが。本人もあの試合に何か思うところがあって、その後の試合を控えているのだろう。