第34章 さよなら またね
そして、慣れたのはもう一つ。
ここで、キリに向けられるあたたかい優しさも。
シカク、シカマル、ヨシノの姿が頭に浮かんで。
嬉しさと申し訳なさ、そして、それとは比にならないぐらいの樹の里への罪悪感がキリの中を占める。
キリ「……」
思い出す故郷。
キリが生まれ育ったみんなの視線は、怒りと憎しみと……悲しみに溢れている。
そして同時に、キリが殺めた何人もの同郷たちの姿が、次々とキリの頭の中を埋め尽くしていく。
キリ「っ……」
押しつぶされるような圧迫感に、キリが息苦しさすら覚えた時。少し離れたところに、ふわりと一つの気配を感じた。
考えるよりも先に、自然と足がその気配へと近づいていく。
キリ(………どうして)
向こうもキリに気が付いたのか、ピタリと止まったその人は180度方向を変えて、こちらへと歩いてくる。
キリ(あなたはいつも……)
そのまま、気付かずに……歩いていってくれたら良かったのに。
そうすれば、追いかけはしなかったのに。
そんな思いとは反対に、自らの足が速度を速めていた事に、キリ本人も気付いていなかった。
心なしか、向こうもいつもよりその歩みが速い気がするのは、気のせいだろうか。
キリ.シカ「っ!!」