第32章 背中の重み
両膝をついて、シカクはキリの体をぎゅっと抱き寄せる。
シカク「お前に迷惑をかけられたなんて思った奴は、誰一人としていねぇ」
キリ「でも」
小さく震えているその声が、シカクの胸を抉るように刺さる。
シカク「いいか、俺が、キリの事を迷惑だなんて思う事は絶対にあり得ねぇ。これは、今までもこれからも、ずっと変わらねぇよ」
キリ「!」
シカク(もし、お前が……木ノ葉じゃなくて、樹の里に戻ることになったとしても……)
シカク「キリが何をしても、どこにいても、何年経ったってお前は俺の自慢の生徒で、大切な仲間だ」
周りの同世代の子ども達どころか、下手に大人と比べても、色目なくキリは優秀だと断言出来る。
だから時折、わかりにくくなってしまうが、今。
シカクの腕の中にいるのは、まだまだ幼く、体も小さな女の子に過ぎない。
震える声をシカクに悟られまいと、必死で隠そうとしている、人に頼る事が下手くそな、不器用な子どもだ。
次第にぽたりぽたりと雫が肩のあたりに落ちて濡れていくのに、気付いていないフリをして、シカクは更にぎゅっとキリを抱く力を強めた。