第6章 謝るタイミング
シカクはシカマルとキリを交互に見比べた後、術を解けと言ってきた。
シカ「は?なんでだよ」
話をしようとしても逃げ出そうとするキリの姿を思い出して反論するが、「早くしろ」とシカクから睨まれて仕方なく術を解く。
シカ(ったく、めんどくせー)
シカク「 悪かったな、お嬢ちゃん。俺は奈良シカクだ。こっちは息子のシカマル。お嬢ちゃんの抱いているそいつは奈良家が管理してたんだが、いなくなって探していた所だ。お嬢ちゃんが保護してくれたのか?」
シカ「!!」
シカ(…は?保護?)
その言葉に目を見開けば、キリはすぐさまシカクに鹿を差し出した。
その腹には包帯が巻かれていた。キリの姿を見れば、体は泥や砂で至る所が汚れていて、鹿を差し出している右手の爪先からは血が流れていた。
まさかと。キリが鹿をさらったのとは、別の仮説が頭に浮かぶ。
キリ「早く!血がずっと止まらない」
アカデミーの頃から今まで、見たことがない姿だった。初めてキリの焦るような、切羽詰まった声を聞いて、それは仮説ではなくなった。
シカ(まじかよ……)
ここまで来て、ようやく己のしでかした失態に気付く。
なぜ鹿が森にいて、どうやって鹿と出会ったのかはわからないが。キリは傷付いた鹿の手当てをして、助けるために必死で木ノ葉の里へと駆けていたのだ。
シカ(ちょっと待てよ。じゃあ俺は怪我した鹿の救助のために、一刻も早く里へ向かおうとしていたキリに……あらぬ疑いをかけて、影真似の術まで使ったわけか)
途端に申し訳なさやら、罪悪感やらなんとも言えない気持ちが込み上げてきた。
新たな事実、おそらく間違ってはいないそれに気付いて頭を抱えたくなる。
そんな中、シカクからすぐに治療へ入るから付いて来いと言われ、はっと我に返った。
去り際にシカクはもう一度キリに謝ったが、そんなことはどうでもいいから早くいけと返事が来る。最後まで鹿を気にかけていたキリを見て、更に心が重くなった。
家路に着くまで、シカクの視線が刺さる。呆れたような無言の叱責は、やけに堪えた。
シカ(俺だってわかってるからやめてくれ親父)