第32章 背中の重み
キリ(なんてことを……)
自分はしてしまったのだと、キリの体からは血が下がっていく。
シカ「あー、いい。そのまま乗ってろ」
そうは言われても、そんなわけにはいない。
もしかしてあれからずっと、背負わせてしまったのだろうか。
正直なところ、自分がどれくらいのペースで、いつまで走れていたのかもわからないほどで。
一体どのくらいの時間、自分がこうして背負われていたのかはわからないが、ある程度回復を遂げているこの体が、それが決して短時間では無いことを教えている。
キリ「降ろして……っ」
そんなキリにシカマルがもう一度「いいから乗ってろ」と伝えても、降ろしてくれと悲痛な声に言うので、シカマルは仕方なくキリを地面へと降ろしてやった。
その際に、ちらりと振り返ってキリを見れば、とんでもない事をしてしまったと、その表情は酷く暗い。
シカ「あー……お前おぶって、その後すぐに橋越えたから。そんな気にすんな」
キリ「そんなはず……」
そんなはずは、無い。
さすがに走るのをやめて数分、十数分の話ならば、キリがいくら人より回復力や体力があるといっても、あの状況からここまで回復することは不可能だ。
シカ「ほんとだっつの。お前ちゃんと走ってたしな」
シカ(つーか限界なんかとっくに越えるまで走りやがって、この馬鹿)