第32章 背中の重み
ふぅ、とシカマルは小さく一つ息をつく。
シカ(もっと……早く言えよな)
もっと早く、自分の事を頼ってくれたら。
どんな状況でだって、助けにいくのに。
そう思って、キリの顔を見れば、すぐにシカマルの中で先ほどの考えは撤回された。
シカ(……はぁー、こいつが言うわけねーか)
自ら「無理だ助けてくれ」なんて、そんな言葉をこのキリが言うはずがないではないか。
あのまま放っておけば、キリはあんな状態でも橋まで自力で走りきっていた気がするのが怖い。
シカ(……俺が、もっと早く気づいてやりゃ良かったんだ)
そう。キリが、助けてと言えないのならば、シカマルがその前に助けてやればいい。
ただ、それだけの話だ。
そう少し眉をひそめたシカマルに、ナルトはわけがわからないようで、首を傾ける。
ナルト「何言ってんだシカマル、あの後も~っ、もがっ~ー!?」
アスマ「ナルト、ちょっと黙ってろ」
カカシ「はーい、ナルトお前はちょっと空気読もうねー」
突如、アスマとカカシの二人に口を塞がれたナルトは連行されていく。
キリ「……本当に?」
シカ「おー。あれからすぐに橋に着いて、そっから後はゆっくり歩いてただけだ」
結局シカマルがキリを背負って走っていたのは、三時間ほどだった。
あの状況からの三時間は正直かなりキツかったが、それでも。
一晩中、音忍四人相手に戦い続け、その後も十七時間も自力で駆けていたキリに比べれば。
シカマルが代わってやれたのは、ほんの三時間。たったそれだけだ。