第6章 謝るタイミング
シカク「鹿が1匹いなくなった。先月産まれたあの子鹿だ。すぐに捜索に行く」
せっかくの休日だが、面倒だとも言ってられない。
つい3ヶ月ほど前にも、ツノが秘薬になる奈良家の鹿がさらわれた事件があった。
今回の子鹿を狙った理由はわからない。まだツノが生えていないが、大人よりも運びやすいと狙いをつけたのかもしれない。
考えたくはないが、食用として捕らえられたのなら、一刻も早い救助が必要だ。
シカマルもすぐに支度をして、鹿の捜索に出かける。
森の方を一時間ほど探していた所で、人の気配を感じた。
ここはあまり人が立ち入るところではない。猛スピードで駆けてくるそれに近付いていけば、そこには見知った顔があった。
シカ「おい、ちょっと待て」
シカマルがキリを呼び止めれば、キリは煩わしそうに足を止めた。
キリ「そこをどいて」
話も聞かずに先を行こうとするキリの前に立ち塞がる。腕に抱かれているのは、ずっと探していた鹿だ。このまま帰すわけにはいかない。
シカ「そうもいかねーんだよ、待て」
キリ「どけと言っている」
そう言って向けられた殺気に、ぞわりと肌が粟立った。背中には冷や汗が流れ、息苦しさすら感じた。
なんとか声を振り絞って、なぜ鹿をさらったのかを聞けば、どうでもいいと一掃され、どこかへ行こうとしたのですぐに影真似の術でキリをとらえる。
シカ「なんのために連れ出したのかはわからねーが、ついてきてもらうぜ」
キリ「連れ出した……?」
シカマルの言葉を怪訝そうに反芻するキリ。
その時、殺気に気付いて駆けつけてきた親父の姿が見えた。