第32章 背中の重み
キリ(っ、視界が、ぼやけてきた、苦しい……っ)
痛かった肩も、肋骨も、今は痛みを感じない。
ただただ苦しさのみがキリの体中を駆け回って暴れ続けている。
ガッ
キリ「!!」
シカク「キリ!!」
木の上を駆けていたキリが、足を踏み外して、落下する。
キリ「くっ……!」
すんでのところでワイヤーを木に投げ、キリはその遠心力を利用して再び上まで戻る。
キリ(重い……っ)
木の枝を蹴る足が、重くてたまらない。
自分が今、どんなスピードで走れているかも、もうずいぶん前からわからなかった。
シカ「キリ! キリっ!!」
キリ「っ!!」
急に腕を掴まれて、びくりと体を竦ませれば、シカマルの姿が映る。
シカ「っ、あぶねぇっ!」
それでも足を進め続けるキリの目の前に、大木が現れて、シカマルは慌ててキリの体を自身の方へと寄せた。
キリ「はぁ、はぁっ」
シカ「キリ、聞こえてるか!?」
その声を聞いて、少しハッキリした意識でキリは辺りを見回した。
キリ「ど、っくらい、はぁっ走っ、たっ……の」
シカ「キリっ、喋んな」