第31章 耐える戦い
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ーーキリ救出後の親子ーー
ごんっと突然、シカマルの頭に衝撃が走る。
シカ「いっっ、てぇーー」
シカマルの頭にげんこつをお見舞いしたシカクは、シカマルに鋭い視線を向けた。
シカク「シカマル、お前さっきはどういうつもりだ。急に一人で走って行きやがって、班行動の意味わかってんのか」
シカ「!」
シカク「今回は良かったが、もし途中で敵と遭遇して、その時にお前一人だったらどうなる?」
シカ「っ……」
確かに、班を率いるシカクやカカシの指示など聞く間もなく、音のアジトを飛び出したシカマルの行動は、隊員として不適切なものだった。
シカクの言うように、キリのもとへ辿り着く前に、音忍に囲まれでもしたらそこで終わりだっただろう。
シカク「勝手な行動は、結果として死を招く場合だってある。それは身勝手な行動をしたお前じゃなくて、他の仲間かも知れねぇ。どんな場合でも、自分が隊の一員であることを忘れるな」
〈死〉という言葉が、シカマルの心に重くのしかかった。
そんなシカマルの姿を見て、シカクは一つ息をつく。
シカク「さっきのお前の行動は、隊長として褒められたもんじゃねぇ……だが今からは、お前の父親としての言葉だ」
そう言われて、ぐしゃりとシカクから頭をなでられる。
シカク「良くやった、シカマル」
シカ「!」
シカク「好きな女を守れねー奴は男じゃねぇ。さすが俺の息子だ」
驚くシカマルに、にっと笑ってからシカクはシカマルの頭から手を離した。
シカク「それにな、勝手な行動ってのはいただけねーが、指示を待ってちゃ手遅れな場合もある。シカマル、頭の固い忍にはなるな」
「ま、そのあたりは経験だ」と、笑うシカクにシカマルも口角を上げる。
シカ「おう」
シカクの言葉が、強く、強く胸に響いた。