第6章 謝るタイミング
シカ「っはぁーーーーーー」
アカデミーに着いて早々。朝から長いため息をつけば、チョウジが首を傾げる。
チョウ「どうしたのシカマル。1年分ぐらいの幸せ逃げてったよ、今」
シカ「あー、なんでもねー」
がしがしと頭をかいてそう言えば、チョウジは何かあるんだったら聞くよと心配してくれた。
悩みの種はひとつだ。
キリが鹿を保護したあの日の事を謝りたいのだが、そのタイミングがなくてずるずると1週間が経ってしまった。
シカマルがキリを子鹿拉致の犯人だと勘違いした翌日。
ガラにもなく緊張しながらアカデミーへ行ったものの、キリは何てことはなくて。
平然と、いつも通りに周囲を寄せ付けない最強のブリザードをその身にまとっていた。
あれからというものキリが1人になるところをずっと待っていた。しかし、休み時間は教室から出ずにじっとしているし、朝はギリギリにやって来て、帰りは光の速さで帰るという完璧な防御体制を奴は整えている。
そうして謝ることも出来ずに、今日に至るわけだが、時間が経つにつれてシカマルのため息は増える。
シカ(だいたいよぉ、俺も悪かったが、あいつももうちょっとあるだろうよ)
シカマルはあの日の事を思い返すーー
1週間前のことだ。
アカデミーは休み。シカマルは特に予定もなく、朝食のあとに惰眠をむさぼっていた時。
親父が部屋に駆け込んで来た。
シカク「シカマル、起きろ」
シカ「ふぁー、なんだよ」
ずいぶん慌ただしい目覚ましだ。夢心地から、強制的に現実に戻されて、シカマルはやれやれと体を起こす。