第28章 悪意の善意
フミ「……荷物をね、持ってくれたんだよ」
大きな重い荷物を、老体にはきついだろうと思ってあの子は持ってくれた。
フミ「私の家は、もう古い古い家なんだけどね。でも……あの家は、もういないけれどおじいさんと過ごした思い入れのある家でね」
夫に先立たれたあとも、大切に、大切に、思い出を抱くように過ごしている家だ。
フミ「立派な家だと、言ってくれたんだよ」
若い子には、こんな古臭い家ではなく綺麗な家の方がいいだろうに。
奈良のお屋敷にも似ているとどこか落ち着いた様子で、あの子はそう言った。
フミ「……本当にあの子は木ノ葉への謀反を考えているのかい? カカシさん、あんたの意見を聞かせてくれないか」
そのために、ここに来た。
木ノ葉の暗部が仕入れた情報に誤りはないと、思ってはいるが……。
カカシが近付いてくる気配を感じ、そして現れたカカシのあの反応。
暗部から聞く娘の情報と、実際の娘を前にして感じた違和感がより大きくなった。
フミ「あんたなら、何か知ってるだろう?」
カカシ「誰に何を言われたのかはわかりませんが……キリは、あなたが見たままの女の子ですよ」
フミ「!!」
カカシ「木ノ葉の上層部に、キリをよく思っていない連中がいます。だが、三代目や自分を含めキリを擁護する者もいる。俺は……キリがそんな風に、誰かに忌み嫌わるような子ではないと思っています」