第28章 悪意の善意
ばっとカカシから手を払われ、まだ中身の入っていた湯呑みは畳の上に転がった。
フミ「!!」
シカ「ちょ、カカシ先生」
何をやってるんだと驚いているシカマルを余所に、カカシは湯呑みの中身を確認する。
カカシ「毒だ。キリ、どのくらい飲んだ!? すぐに吐き出せ!」
カカシ(なんだってこんな劇薬が……!)
ほぼ無味無臭、かつ即効性の強い毒薬がこぼれた茶からわずかに香る。
主に暗殺任務時などに使われるそれは、一般家庭に置かれているようなものではないはずだ。
どう考えても致死量など軽く越えている、おびただしい量の毒が入ったこれを。
キリは飲んだというのか。
カカシ「キリ!!」
バッとキリの隣にしゃがみ込めば、少し悲しい瞳をしたキリと視線が混じる。
キリ「……大丈夫です」
シカ「カカシ先生、毒ってどういう事だよ!?」
キリ「……私に、毒物の類はほとんど効果がありません」
焦るシカマルとは対照的に、キリは落ち着きはらっていた。
キリ「それに、あなたのお茶には入ってないから。安心して」
カカシ「キリ……知ってたのか」
シカ「お前っ、わかってたなら何で言わねーんだ!!」